第4章・第4話
大人が変わったあと、子どもの中で静かに起きていること
「正解を出す役」から降りるという自由
親や先生は、いつの間にか
「間違えられない役割」を
背負っています。
この回では
その役割から降りたときに起きる
変化を見ていきます。
*
大人の反応が変わると
子どもはすぐに変わる——
…わけではありません。
むしろ、多くの場合
何も変わっていないように
見える時間が続きます。
学校には、まだ行かない。
口数も、相変わらず少ない。
部屋にいる時間も、長いまま。
だから、大人の心に
また不安が顔を出します。
「本当に、これでいいんだろうか」
「ただ様子を見ているだけで
何も進んでいない気がする」
でも実は——
この“何も起きていないように
見える時間”こそ
子どもの内側では
とても重要な時間です。
子どもは、まず
外の世界を変えようとはしません。
最初に起きているのは
自分の内側での「安全確認」です。
・この人は
もう追い立ててこないだろうか
・失敗しても
見捨てられないだろうか
・沈黙していても
怒られないだろうか
それを、言葉ではなく
“感覚”で確かめています。
だから
行動が変わらないのです。
動かないのは
止まっているのではありません。
確かめているのです。

これまでの子どもたちは
何かをする前に
いつも「先回り」していました。
・怒らせないだろうか
・がっかりさせないだろうか
・期待に応えられない自分は
ダメじゃないか
そうやって
自分の行動より先に
周りの反応を予測していた。
その状態では
安心して動くことはできません。
ところが
大人の反応が変わると
この“先回りセンサー”が
少しずつ緩み始めます。
怒られない。
責められない。
正されない。
その感覚が
何度も、何度も、
日常の中で繰り返される。
すると
子どもの内側で
こんな変化が起き始めます。
——あれ?
——何もしなくても
ここにいていいのかな。
この感覚は
とても小さく
とても不安定です。
だから
すぐに行動にはつながりません。
この段階で
よく見られる小さな変化があります。
・以前より、ため息が増える
・ぼーっとする時間が長くなる
・眠る時間が増える
・感情の起伏が、少し出てくる
一見すると
「悪くなったよう」に見える
こともあります。
でもこれは
緊張が抜け始めたサインです。
これまで張りつめていた分
一度、力が抜ける。
それは
壊れているのではなく
緩み始めている状態です。
だから、ここで
戸惑わなくても大丈夫です。
そして、ここで
元に戻そうとしないことが
とても大切です。
この“何もしない時間”は
子どもが初めて
安全な場所で休んでいる時間
だからです。
安心が入ると
子どもはすぐに前に進む——
そう思われがちですが
実際は逆です。
まず、止まります。
次に、休みます。
そして
ようやく「感じ始める」。
・本当は、何が嫌だったのか
・何が怖かったのか
・何を我慢してきたのか
それらが
少しずつ浮かび上がってきます。
だから
感情が揺れることもあります。
それは
回復が遠ざかっているのではなく
回復が動き出した証拠です。
大人にできることは、
この時期に
何かを起こすことではありません。
起きていることを
邪魔しないこと。
そして、
自分の不安が出てきたら、
それを子どもに向けず、
自分の内側で扱うこと。
それだけで、
十分すぎるほどです。
次の話では
この「内側の変化」が
やがてどんな行動に
つながっていくのか。
小さく、でも確実に現れる
“最初の動き”について
見ていきます。
ここまで来たら
もう急がなくて大丈夫です。
回復は
ちゃんと進んでいます。
———
▶ この章を続けて読む
【 第4章|大人自身の解放】
https://kokoronokizu.jp/tag/第4章_大人自身の解放/
———
岩永留美|逆説人生法則



コメント