【3章-5】「できる・できない」より前に、心が取り戻すもの

心の傷と回復

第3章・第5話

「できる・できない」より前に、心が取り戻すもの

元に戻るのではなく、「新しく生き直す」

回復は
過去に戻ることではありません。

それまでの経験を含んだまま
新しい形で生き始めることです。

この章の最後に
その意味を整理しておきましょう。




回復が進み始めると
どうしても目が向きやすいのは
「できるようになったかどうか」です。

・学校に行けた
・外に出られた
・人と話せた
・前より落ち込まなくなった

こうした変化は
確かに大切です。

けれど
それよりもずっと前に
心の奥で起きている
もっと重要な変化があります。


それは
自分をどう見るか、が
変わってくること。

回復の初期にいる心は
ほとんどの場合
自分をとても厳しく見ています。

「できない自分はダメだ」
「また失敗した」
「迷惑をかけている」

行動が止まっている間も
心の中では
自分への責めが
ずっと続いていることが多い。


ところが
安心のある関係の中で
揺れながら行動を試し
戻ってきて、また休む。

そのプロセスを
何度も経験するうちに
少しずつ
内側の視点が変わり始めます。

「今日は行けなかったけど
 それでも自分はここにいる」

「怖かったけど
 やめても大丈夫だった」

「できなかった=終わり
 ではなかった」

こうした体験が
言葉になる前に
感覚として積み重なっていきます。


このとき
心が取り戻しているのは
自己評価ではありません。

自信でも
肯定感でもない。

それは——
自己信頼です。

「自分は、
 壊れない」

「揺れても、
 戻ってこられる」

「失敗しても、
 自分を失わない」


この感覚は
誰かに褒められて
育つものではありません。

揺れた自分を
切り捨てられなかった体験
からしか
生まれません。


だから
この段階では
大人がすることは
とてもシンプルになります。


評価しない。
急がせない。
結果で測らない。

「今日はどうだった?」と
聞かなくてもいい。

「行けたね」「行けなかったね」と
整理しなくてもいい。

ただ
変わらず関係が続いていること。

それ自体が
子どもの心にとっては
大きくて大切な情報です。


ここまで来ると
子どもの中に
ひとつの確かな感覚が育っています。

それは

「自分の状態は
 自分で扱っていい」

という感覚です。

無理をしてもいいし
やめてもいい。

挑戦してもいいし
立ち止まってもいい。

選び直してもいいし
同じ道をやり直してもいい。

この感覚があるからこそ
人は
自分の人生を
自分の手に戻していけます。



第3章では
回復が動き出した子どもの内側で
何が起きているのかを
見てきました。

・感じる力が戻る
・存在していい感覚が育つ
・選ぶ力が芽生える
・行動が揺れながら動き出す
・自分を信じる感覚が生まれる

どれも
外からは見えにくい。

でも
ここを通らずに
安定した回復は起きません。


次の章では
視点を
大人自身の人生へ移します。

子どもの回復に伴って
親や先生の内側で
何がほどけていくのか。

回復は、決して
子どもだけの物語ではありません。

ここから先は
あなた自身の物語にも
静かに触れていきます。


———
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【第3章|子どもの内側の変化】
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