第2章・第4話
子どもを変えようとしない関わりが、回復を早める理由
前回までで
子どもの反応は「問題」ではなく
関係性の中で生まれていることを
見てきました。
では
「変えようとしない関わり」とは
何もしないことなのでしょうか。
今回は
回復を早める“逆説的な関わり”について
丁寧にひも解いていきます。
*
「そのまま見守っていて
本当に大丈夫なんでしょうか」
これは
第2章をここまで読んできた
多くの親御さんや先生が
心のどこかで感じている
問いだと思います。
・何か声をかけたほうがいいのでは
・行動を促したほうがいいのでは
・そのままでは、余計に長引くのでは
「変えようとしない関わり」という
言葉を聞くと
放置しているような感覚や
責任を放棄しているような不安が
よぎることもあるかもしれません。
でも、ここで言う
「変えようとしない」は
何もしない、という
意味ではありません。
むしろ、その逆です。
子どもを変えようとするとき
大人の内側では
ほぼ必ず、こんな前提が
動いています。
「今の状態は、よくない」
「早く元に戻さなければ」
「このままでは危険だ」
これは
善意であり、愛情であり
責任感から生まれたものです。
けれど
子どもの心は、その前提を
とても敏感に受け取ります。
子どもの心の中では
こんな翻訳が起きます。
「今の自分ではダメなんだ」
「ここにいるだけでは
足りないんだ」
「早く変わらなきゃ
いけないんだ」
—— その瞬間
安心は、静かに後退します。

回復に必要なのは
「正しい対応」よりも先に
安全だと感じられる場です。
ここで言う安全とは
・評価されない
・急かされない
・正解を求められない
・“今のまま”でも 関係が壊れない
そう感じられる状態です。
この安全がないまま
どれだけ前向きな言葉をかけても
どれだけ環境を整えても
心は、なかなか動き出しません。
なぜなら
心は「変化」そのものを
危険と感じる習性があるからです。
人は、安心だけで
変わるのではありません。
*・゜゜・*:.。..。.:*・’・
安心して
“変わらなくていい”と
感じたときに
初めて変わり始めます。
*・゜゜・*:.。..。.:*・’・
これは、一見すると
とても矛盾しているように
見えます。
でも、心の仕組みとしては
とても合理的です。
第0章で描いた子どもたちを
思い出してください。
・教室でいじめに耐えていた子
・SNSで孤立しながらも
つながりを失わないようにしていた子
・不登校という形で
身体ごとブレーキを踏んだ子
彼らは
「変わりたくなかった」
のではありません。
変わる余裕が、なかったのです。
心のエネルギーのほとんどを
「これ以上傷つかないため」に
使っていたからです。
だから
「こうしてみたら?」
「前向きに考えてみよう」
「少しずつでいいから」
そうした言葉が
重く感じられることもあります。
それは
その言葉がけが悪いからではなく
心がまだ“守りのモード”にいるからです。
では
「変えようとしない関わり」とは
具体的に何なのでしょうか。
それは
・動けない状態を
急いで終わらせようとしない
・感情の波を、問題として扱わない
・沈黙や停滞を、失敗と解釈しない
そして何より
「今は、これが必要なんだね」
と、心の中で理解することです。
口に出して言わなくても構いません。
説得する必要もありません。
大人の内側にある
この理解の姿勢が
空気として、子どもに届きます。
すると
不思議な変化が起き始めます。
・表情が、ほんの少し緩む
・甘えや本音が、出てくる
・イライラや反発が、一時的に増える
これは
「悪くなった」のではありません。
心が、安全かもしれないと感じて、
今まで抑えていた反応を
外に出し始めたサインです。
回復の初期段階では、
よく起こる現象です。
ここで大人が慌てて
「やっぱり何かしなきゃ」と
元の関わりに戻ってしまうと
心は再び、閉じてしまいます。
「何もしない勇気」とは
放っておくことではありません。
揺れを含めて、信じて待つ勇気です。

・今は、ここに留まっている時期
・今は、エネルギーを溜めている時期
・今は、守りを緩めている途中
そう理解できると
大人の内側の焦りも
少しずつ落ち着いていきます。
そして、その落ち着きが
子どもにとっての
「安全の証明」になります。
回復は
一直線に進むものではありません。
良くなったり、戻ったり
進んだように見えて、止まったり。
でも
変えようとしなくなった関係の中で
心は確実に、準備を始めています。

次の話では、
そんな関わりの中で、
最初に現れてくる
「とても小さな変化」について描きます。
劇的ではない。
でも、確かに始まっている——
その兆しを。
———
▶ この章を続けて読む
【第2章|関係性の構造 一覧】
https://kokoronokizu.jp/tag/第2章_関係性の構造/
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岩永留美
心の傷を回復と成長の力に変える|逆説人生法則メソッド開発



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