第1章・第3話
なぜ、同じ苦しさが何度も繰り返されるのか
「もう終わったはずなのに」
これは
心の相談の現場で
本当によく聞く言葉です。
・いじめは、もう何年も前の話
・環境も、人間関係も変わった
・今は、特に大きな問題は起きていない
それなのに——
ふとした場面で
胸がざわつく。
身体がこわばる。
頭が真っ白になる。
「どうして、また…?」
そんなふうに、
自分自身を不思議に思う人も
少なくありません。
ここで、多くの人は
出来事を探しに行きます。
「あのときの何が
トラウマになってるんだろう」
「まだ気持ちの整理が
できていないのかな」
「もっと時間が
必要なのかもしれない」
でも実は
同じ苦しさが繰り返される理由は
出来事そのものにあるとは限りません。
鍵になるのは、
心の中に残っている
“前提”と“記憶のフィルム”です。
私たちの心は
出来事をそのまま保存する
わけではありません。
そのときに
「どう感じたか」
「どんな意味づけをしたか」
それらをセットにして
心の奥にしまい込みます。
たとえば——
・助けを求めたけれど
届かなかった
・正直な気持ちを出したら
笑われた
・黙っていたほうが
その場は安全だった
そんな経験が重なると
心の中に
ある前提が育っていきます。
「わたしは、厄介者だ」
「本音を出すと、笑われる」
「安心できる場所は、ない」
これらは
誰かに教えられたわけでも
意識して選んだわけでもありません。
生き延びるために
自然に形づくられた前提です。
そして同時に
そのときの怖さ、恥ずかしさ、孤独感も
「傷ついた記憶のフィルム」として
心の奥に一緒に保存されていきます。
重要なのは、ここからです。
この前提とフィルムは
「過去の箱」に、きれいに
仕舞い込まれるではありません。
日常の中で起きる
何気ない出来事に
重ね合わされて再生されます。
誰かの表情が曇ったとき。
返事がなかなか来ないとき。
意見を求められたとき。
その瞬間
今ここで起きていることより先に
心の奥にある前提とフィルムが
反応してしまう。
「また、同じことが
起きるかもしれない」
「ここは危険かもしれない」
そうして
現実よりも早く
心と身体が緊張状態に入るのです。
だから
同じ苦しさは
“同じ出来事”がなくても
繰り返されます。
繰り返しているのは
出来事ではなく
内側に蓄積された前提や記憶といった
内面情報の反応だからです。
ここで大切なのは
「その前提はもう無いよ」と
打ち消そうとしないこと。
前提も、フィルムも
あなたを苦しめるために
生まれたものではありません。
そのときのあなたを、
守るために必要だった。
だからこそ
否定したり、消そうとすると
反応はむしろ強まります。
必要なのは、
「理解」と「愛」です。

そう感じるしか
なかったんだね。
そう思い込むほど
必死だったんだね。
そうやって
反応の本当の意味に
光が当たったとき
前提は、少しずつ
“前提”であることをやめ
フィルムは
自動再生をやめていきます。
*
次回は
多くの人がつまずきやすいポイント
「前向きになろうとするほど
苦しくなるのはなぜなのか」
回復が
努力やポジティブさから始まらない理由を、
見ていきましょう。
———
▶ この章を続けて読む
【 第1章|心の構造 一覧】
https://kokoronokizu.jp/tag/第1章_心の構造/
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岩永留美
心の傷を回復と成長の力に変える|逆説人生法則メソッド開発



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