第3章・第3話
守りの人生から、「選べる人生」へ移るとき
「自分は、ここにいていい」
この感覚が、
少しずつ心に根を張り始めると
子どもの内側では
もう一つの変化が起きてきます。
それは
未来を思い描けるようになることです。
回復の初期段階にある心は
ほとんどのエネルギーを
「今をやり過ごすこと」に
使っています。
・今日を乗り切る
・これ以上傷つかない
・危険を回避する
この状態では
「これからどうしたいか」
「将来どうなりたいか」
を考える余裕は、ありません。
それは怠けでも
意欲の欠如でもありません。
心が、ずっと“非常事態”にいた
というだけのことです。
ところが
「ここにいていい」
という感覚が育つと
心は少しずつ
非常事態モードを解除していきます。
すると
それまで見えなかったものが
視界に入るようになります。
・この先、どうしたいんだろう
・本当は、何が好きなんだろう
・やってみたいことって、あったかな

これらは
はっきりした言葉になる前に
小さな違和感や、かすかな興味として
現れることが多いです。
「なんとなく、これは嫌」
「理由は分からないけど、ちょっと気になる」
この“なんとなく”こそが
選ぶ力の芽です。
ここで重要なのは
この段階の心は
まだとても不安定だということ。
選べるようになったからといって
すぐに前に進めるわけではありません。
むしろ
・迷う時間が長くなる
・決めたあとで、また揺れる
・「やっぱり違うかも」と戻る
そんな動きを繰り返します。
でも
これは後退ではありません。
守るために止まっていた心が
選ぶために揺れている
という変化です。
「守りの人生」とは、
危険を避けることを
最優先にした生き方です。
・嫌われないように
・怒らせないように
・目立たないように
選択の基準は
「安全かどうか」。
一方で
「選べる人生」では、
基準が少し変わります。
・自分は、どう感じるか
・本当は、どちらが楽か
・どちらが、自分らしいか
この移行は
とても勇気が要ります。
なぜなら
選ぶということは
うまくいかない可能性も引き受ける
ということだからです。

ここで、大人ができることは、
選択を正すことではありません。
「それはやめたほうがいい」
「こっちのほうが安全だよ」
そう言いたくなる場面は
必ず出てきます。
でも、ここで必要なのは
正解を教えることよりも
選ぼうとする姿勢そのものを
危険扱いしないことです。
迷ってもいい。
戻ってもいい。
失敗しても、関係は壊れない。
この前提があるからこそ
心は、選ぶ力を育て続けられます。
やがて
小さな選択が積み重なり
行動として表に出てきます。
・外に出てみる
・誰かと話してみる
・新しい場所に足を運ぶ
それは
以前のような
「頑張っての一歩」ではありません。
選んだ結果としての一歩です。
だから、
たとえ途中で止まっても
以前ほど深く、心は折れません。
回復とは
元に戻ることではありません。
守り続けるしかなかった人生から
選べる人生へ移行していくこと。

そのプロセスは
ゆっくりで、揺れながらで
とても人間的です。
次の話では
この「選べる感覚」が育ったとき
子どもの行動に
どんな変化が現れてくるのか。
外から見える変化と
内側で起きている変化のズレを
丁寧に見ていきます。
ここから
回復は少しずつ
“目に見える形”を取り始めます。
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▶ この章を続けて読む
【第3章|子どもの内側の変化】
https://kokoronokizu.jp/tag/第3章_子どもの内側の変化/
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岩永留美
心の傷を回復と成長の力に変える|逆説人生法則メソッド開発



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